専業主婦ですが、パートで「年120万円」ほど稼ぎたいです。夫には「第3号なら保険料を払わず年金がもらえるのに」と言われましたが、働くと“損”なのでしょうか?「払う・もらうお金」を比較
配信日: 2025.06.05

本記事では、専業主婦がパートで年間120万円を稼ぎ、年金保険料を負担した場合、本当に損をするのか、年金制度や保険料の負担、将来的な年金額の増減について解説します。

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専業主婦は国民年金第3号被保険者
仕事はしていないものの、家事や育児などで時間の余裕がなく、就労が厳しい専業主婦(専業主夫)は少なくありません。会社員などに扶養されていて、自身の年収が一定以下の専業主婦は「国民年金第3号被保険者」として国民年金に加入しています。
第3号被保険者は自分で年金保険料を支払わなくても、老後に年金を受け取ることができます。第3号被保険者としての年金額は、老齢基礎年金の支給額に準じます。2025年度の老齢基礎年金は満額で年間83万1700円です。
専業主婦になる前の期間に国民年金保険料をもれなく納めていたり、国民年金加入時から第3号被保険者だったりという場合、65歳以降に満額を受け取れます。
パートで120万円稼いだ場合は年金保険料の負担が発生する?
会社員として厚生年金に加入していた場合、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金の「報酬比例部分」が支給されます。報酬比例部分は月々の収入額に応じて決まるため、働いていた期間が長く、収入が高いほど年金額が増える仕組みです。
事例のようにパートで年間120万円稼ぎ、勤務先の従業員数が51人以上で次の条件を満たすと、自身で厚生年金保険料を支払う必要があります。
(1)1週間の労働時間が週20時間以上
(2)賃金が月8万8000円以上
(3)雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれる
(4)学生ではない
条件を満たして厚生年金保険料を負担した分は「報酬比例部分」として将来受け取る年金額に加算されます。
条件を満たした場合の保険料負担額と将来増える年金額
それでは、パートで年間120万円を稼ぎ、厚生年金に加入する条件を満たしている場合の年金保険料と年金受給額を具体的に見ていきましょう。今回はパートでの年収120万円(月10万円×12ヶ月)が10年間続いたとして計算します。
まず保険料ですが、月収が10万円の場合、標準報酬月額の2等級に当たるため月額8967円の支払いが発生します。10年間同じ金額で払い続けたとすると、合計は107万6040円です(8967円×12ヶ月×10年間)。
続いて、この保険料を負担したことによって65歳以降に増える年金受給額を見ていきます。「報酬比例部分」で受け取れる年間金額は次の計算式で求められます(平成15年4月以降加入の場合)。
・平均標準報酬額×5.481/1000×厚生年金保険の加入月数
今回の場合、平均標準報酬額は9万8000円、加入月数は120ヶ月ですので、計算すると6万4457円となります。
つまり、10年間で107万6040円の保険料を負担すると、65歳以降に受け取る年金額が年間6万4457円増えます。一見、損な気もしますが、損かどうかは「いつまで受給するか」次第です。
年金は一生涯受給できますので、今回の場合だと17年以上受給すれば、支払った保険料を受給額の増加分が上回ります。つまり、65歳から受給を開始した場合、82歳より長生きできれば、得とも言えます。
女性の平均寿命は87歳(令和5年)ですので、支払った保険料以上に年金の受給額が増えることも決して少なくないでしょう。
まとめ
専業主婦がパートで年間120万円稼いだ場合、年金保険料が発生する可能性があります。年金保険料の負担は決して軽くはないため、思ったよりも手取りが少なくなり、損をした気持ちになることもあるかもしれません。
しかし、将来的にはもらえる年金が増え、長期的な収支としてはプラスになるケースもあります。具体的に自分の収支が気になる人は「公的年金シミュレーター」などを使い、確認してみると良いでしょう。
出典
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー