父の年金が「月6万円」と聞き衝撃を受けました。それに対し、友人の父は「月15万円」もらっているようです。この差は何ですか?
配信日: 2025.05.15

「同じように長年働いてきたはずなのに、なぜこれほどの差が生まれるのか?」そう疑問に感じたことのある人もいるかもしれません。
この違いはどこから来るのでしょうか。「自分の親が毎月6万円の年金収入を得ており、友人の親は15万円近く受け取っている」という方のケースを例に、解説していきます。

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
年金額の差が生じる主な理由
年金額の差が生じる理由として最も大きなものには、「厚生年金と国民年金の違い」があります。国民年金は自営業者などが主に加入するもので、受取額は満額でも月額6万8000円にしかなりません(令和6年度ベース)。
一方で、会社員や公務員が受け取る厚生年金は、収入や加入期間によって増減しますが、厚生労働省年金局によれば、平均的には14万円程度を受け取ることができるようです(併給する老齢基礎年金の額を含む)。
そのため、自分の親が6万円しか受け取っておらず、友人の親が15万円近く受け取っている場合、現役時代に親が加入していた年金制度の違いによるところが大きいと考えてよいでしょう。
個人年金を含めている可能性がある
年金と一口に言っても、公的年金だけではありません。
民間の保険会社で加入している個人年金の額が15万円の中に含まれている、もしくはかつての勤務先が独自の企業年金制度を有しており、それを含めて15万円としているかもしれません。
会社員で長く勤めていた場合はともかく、国民年金に加入していた期間が長い方が、月額10万円を超えるような年金を受け取っていれば、おそらくそういった個人年金などが含まれていると考えてもよいでしょう。
加入期間や繰下げ受給などの差も考えられる
厚生年金に限らず同じ国民年金でも、15万円とはいかずとも、それに近い大きな差がつくこともあります。
例えば、先述の「国民年金が月額6万8000円」という点は、40年間国民年金に加入し、保険料を支払いつづけた場合です。20年間しか保険料を払っていなければ、理論上その額は半額の3万4000円となります。
また、年金は支給開始時期を遅らせたり早めたりすることによって、同じ加入状況でも差がつきます。例えば、月額6万8000円もらえる方が70歳まで繰下げ受給をすると、42%増加し、受給額は9万6560円となります。
年金額を増やすために、できることはあるのか?
正直なところ、すでに月額6万円の年金を受け取っている状態では、ここから年金額を増やすというのは難しいでしょう。
1つ方法があるとすれば、働き、厚生年金に加入することです。厚生年金は年金を受け取りながら働いて、厚生年金保険料を納めることで、しっかり年金額にそれが反映されるようになるからです。
ただし、これができるのは原則として70歳までです。70歳以降は厚生年金に加入できなくなってしまうため、年金額を増やすことが、現実的には不可能となってしまいます。
まとめ
老齢年金の額に差がつく理由は、基本的に加入している年金が国民年金か厚生年金かの差であると考えても、差し支えがないでしょう。
いずれにせよ、個人年金を含め年金の受取額は、それまでの人生に応じて、個人差が大きく出てくるものです。
あまり他者と比較するのではなく、受け取っている年金額でどう老後の生活を豊かにしていくか考えていく方が、建設的かもしれません。
出典
厚生労働省年金局 令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況 II.厚生年金保険 (2)給付状況 表6 厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額の推移(8ページ)
執筆者:柘植輝
行政書士