退職金の税金は勤続年数によって変わる! 「20年以下」と「20年超」ではどのくらい違うの?

配信日: 2025.05.14

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退職金の税金は勤続年数によって変わる! 「20年以下」と「20年超」ではどのくらい違うの?
退職金に対する現行の課税額は、退職金の額だけでなく勤続年数によっても異なることをご存じですか?
 
本記事では、退職金の課税ルールについて解説します。
仁木康尋

日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

人事部門で給与・社会保険、採用、労務、制度設計を担当、現在は人材会社のコンサルトとして様々な方のキャリア支援を行う。キャリア構築とファイナンシャル・プランの関係性を大切にしている。

退職金を受け取るときの税金

退職金はその性格上、長年の勤労に対する報償的給与として支払われるものであるという考えがあります。そのため、税金の計算上は退職金独自の控除があり、所得の区分も「退職所得」に分類され他の所得とは分離して課税されるなど、税負担が軽くなるように配慮されています。
 
通常は、退職金の支払いを受けるときに所得税等や住民税が源泉徴収、または特別徴収されます。
 

税金の計算方法

(1)退職所得の金額の計算

税金の計算は、退職所得をもとに計算します。退職所得は原則として、次のように計算します。
 
退職所得の金額 = (退職金の額 - 退職所得控除額) × 1/2
 

(2)退職所得控除額の計算

「退職所得控除」は、退職金独自の所得控除です。現在の課税制度では、勤続年数の長さに応じて控除額は高くなっていきます。また、勤続年数が20年を超えると勤続年数1年当たりの控除額は高くなります。
 
このような仕組みは、労働市場の流動性を妨げにもなりうることから、時代の流れにそぐわなくなってきているのではという議論もあります。
 

【勤続年数が20年以下の場合】
勤続年数 × 40万円  
※80万円に満たない場合には、80万円
 
【勤続年数が20年を超える場合】
20年 × 40万円(800万円) + (勤続年数 - 20年) × 70万円
 
(補足)
・勤続年数に1年未満の端数があるときは1年として計算します。
・計算した金額が80万円未満の場合は、退職所得控除額は80万円です。
・障がい者となったことに直接起因して退職した場合は加算額があります。

 

(3)税金の計算

所得税の計算は、退職所得の金額を税額表(図表1)に当てはめて行います(住民税は退職所得の金額に税率10%乗じて計算します)。
 
図表1

図表1

 

(4)計算例

【事例1】退職金:2000万円、勤続年数:25年2ヶ月の場合

退職所得控除額 = 20年×40万円 + (26年 - 20年) × 70万円 
        = 800万円 + 420万円 
        = 1220万円
 
退職所得の金額 =(2000万円 - 1220万円) × 1/2
        = 780万円 × 1/2
        = 390万円
 
所得税額 = 390万円 ×20% - 42万7500円 = 35万2500円
(注:復興特別所得税2.1%は加味していません)
 

(5)勤続年数20年を境目に所得税にどのぐらい違いが出るのか、退職金が2000万円として勤続21年と20年で比較します。

イ.【退職金:2000万円、勤続年数:21年の場合】

退職所得控除額 = 20年 × 40万円 + (21年 - 20年)× 70万円 
        = 800万円 + 70万円 
        = 870万円
 
退職所得の金額 =(2000万円 - 870万円) × 1/2
        = 1130万円 × 1/2
        = 565万円
 
所得税額 = 565万円 × 20% - 42万7500円 = 70万2500円
(復興特別所得税を除く)
 

ロ.【退職金:2000万円、勤続年数:20年の場合】

退職所得控除額 = 20年 × 40万円 
        = 800万円
 
退職所得の金額 =(2000万円 - 800万円) × 1/2
        = 1200万円 × 1/2
        = 600万円
 
所得税額 = 600万円 × 20% - 42万7500円 = 77万2500円
(復興特別所得税を除く)
 
このように比較すると、70万2500円と77万2500円で7万円の差になりました。
 

まとめ

退職金の税金は、退職所得控除などにより税負担が軽くなるように配慮されています。ただし、この恩恵を受けるためには、退職金の支払いを受けるときまでに勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要があります。
 
それによって、源泉徴収だけで所得税等の課税関係が終了し、退職所得に関して確定申告をせずに完結します。なお、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなど、別途確定申告をしなければならない場合もあります。
 
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出しなかった場合には、退職金の額から一律20.42%の所得税(復興特別所得税を含む)が源泉徴収されてしまいます。その場合には確定申告をすれば精算できますので、覚えておきましょう。
 

出典

国税庁 退職金と税
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
 
執筆者:仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

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