初期のがんが見つかり治療を開始するのですが、医療保険に入っていません…。がん治療の治療費はどれくらいかかるのでしょうか?
配信日: 2025.04.19


1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士
外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。
がんになる人の割合
日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性が62.1%、女性は48.9%で、2人に1人ががんになることになります。男性では、前立腺がん、大腸がん、肺がん、胃がん、肝臓がんの順番で、女性では、乳がん、大腸がん、肺がん、胃がん、子宮がんの順番でなる人が多いです。
がんと聞くと以前は、治らない病気と考えられていましたが、5年相対生存率*は、男性が62.0%、女性が66.9%で長く付き合っていく病気になりました。
男性では、5年相対生存率が高いのは、前立腺がん(99.1%)、皮膚がん(94.4%)、甲状腺がん(91.3%)、喉頭がん(81.8%)、膀胱がん(76.5%)、女性では、皮膚がん(94.6%)、乳がん(92.3%)、喉頭がん(81.7%)、子宮がん(78.7%)、大腸がん(71.9%)となっています※1。
がんと診断された場合に治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標の1つで、異なる集団や時点などを比較するために慣例的によく用いられます。
あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体注で5年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかで表します。100%に近いほど治療で生命を救えるがん、0%に近いほど治療で生命を救いにくいがんであることを意味します。
(注:正確には、性別、生まれた年、および年齢の分布を同じくする日本人集団)
がんの治療費
それでは、がんになるといくらかかるのでしょうか。
たとえば、男女ともに多い大腸がん(結腸がんと直腸がんの合計)で入院した場合の1件あたりの平均医療費(月)は約71.9万円、通院などの入院外では約4.9万円です。
一方、白血病で入院した場合の1件あたりの平均医療費(月)は182.6万円、入院外は9.8万円で、がんの種類によって費用が異なります。
実際に窓口で払った費用は医療費の1割~3割なので、現役世代で大腸がんの治療をした人の負担は、入院の場合は21.6万円、入院外の場合は1.5万円になります※2。
高額療養費制度
窓口で支払った自己負担額は、高額療養費制度を利用することで軽減できます。高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額がひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。上限額は年齢や所得によって異なります。
年収が800万円の人が50歳のときに大腸がんの治療で入院と通院合わせて1ヶ月で80万円かかかった場合の計算式は、(80万円-55万8000円)×0.01=2420+16万7400= 16万9820で、上限額は、16万9800円になります。
さらに負担を減らす仕組みとして以下があります。
高額医療費制度の支給対象となるのは、保険適用される診療に対し、患者が支払った自己負担額です。「食費」や患者の希望によってサービスを受ける「差額ベッド代」「先進医療にかかる費用」等は、高額療養費の支給対象とはなっていません※3。
まとめ
高額療養費は、自身が加入している公的医療保険に高額療養費の支給申請書を提出、または郵送することで支給が受けられます。また高額療養費制度の他、条件によって利用できる公的制度として、障害年金、障害手当金、傷病手当金などがあります。民間の保険に入っていなかったということであきらめずに利用できる制度を検討しましょう。
出典
(※1)国立研究開発法人国立がん研究センター 最新がん統計
(※2)政府統計の総合窓口(e-Stat) 医療給付実態調査(2022年度)
(※3)厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)
執筆者:篠原まなみ
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士