定年まであと10年ありますが、定年後は「国民健康保険」に入るしかないですか?家族の扶養に入る方が負担は少ないでしょうか?
配信日: 2025.06.08

この記事では、それぞれの制度の特徴や保険料の違いを分かりやすく解説します。

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定年した後の健康保険について
定年した後の健康保険については大きく分けて3つの選択肢が考えられます。
1.任意継続健康保険に加入する
2.国民健康保険に加入する
3.被扶養者として家族の健康保険に加入する
それぞれの特徴を見ていきましょう。
任意継続健康保険に加入する
任意継続健康保険とは、定年退職などで会社を辞めた後も、これまで加入していた健康保険に引き続き加入できる制度です。継続できる期間は最長2年間と決められており、在職中と同じ条件で保険を利用することが可能です。
任意継続健康保険に加入するには、退職前に同じ健康保険に継続して2ヶ月以上加入していたことが条件となります。また、保険組合によっては「付加給付」と呼ばれる制度が利用できる場合があり、医療費の自己負担額が一定額を超えた際に、その超過分を補助してもらえることもあります。
任意継続健康保険は退職日の翌日から20日以内に加入手続きを行わなければならないため、早めの準備を心がけましょう。
国民健康保険に加入する
任意継続健康保険に加入しない場合、多くの方は国民健康保険への切り替えが必要になります。国民健康保険は、自営業者や主婦、学生などを対象とした公的な医療保険制度です。
任意継続とは異なり、74歳まで継続して加入できることが特徴で、75歳になると自動的に「後期高齢者医療制度」へと移行します。
被扶養者として家族の健康保険に加入する
退職後はご家族の健康保険に「被扶養者」として加入する、という選択肢もあります。この場合、保険料の負担は不要ですが、加入には一定の条件があるため注意が必要です。
まず、被保険者の三親等以内の親族であること、そして被保険者に扶養されている(生計をともにしている)ことが基本条件です。
さらに、収入面での条件もあります。
・60歳未満の場合:年間収入が130万円未満かつ、被保険者の収入の半分未満であること
・60歳以上または障害年金の受給者の場合:年間収入が180万円未満であり、被保険者の収入の半分未満であること
このように、扶養に入るには親族関係や生計、収入の条件をすべて満たす必要があります。
保険料の違いについて
前述したように被扶養者として健康保険に加入すれば保険料はかかりません。ここでは、任意継続健康保険と国民健康保険の保険料について解説します。
任意継続健康保険の場合
任意継続健康保険に加入する場合、保険料は退職時の「標準報酬月額」を用いて決定されます。この「標準報酬月額」とは、毎月の給料(基本給や各種手当など)を基に、決められた等級に当てはめた金額のことです。
保険料の計算は標準報酬月額に対して、お住まいの都道府県ごとに定められた保険料率を乗じることで算出されます。
令和7年4月以降は、標準報酬月額の上限が32万円になりました。そのため、実際の金額にかかわらず、退職時の標準報酬月額が32万円を超えている場合でも「32万円」を上限として保険料が算出されます。
つまり、保険料は「退職時の標準報酬月額」または「32万円」のいずれか低い方を基準に決まる仕組みです。なお、在職中は保険料の半分を会社が負担してくれていましたが、退職後は保険料の全額を自分で支払う必要があります。
国民健康保険の場合
国民健康保険の保険料は、おもに次の3つの要素によって決まります。
・前年の所得に応じて計算される「所得割」
・世帯内の国民健康保険加入者数に基づいて算出される金額「均等割」
・国民健康保険に加入する全世帯が平等に負担する「平等割」
このうち、保険料に大きく影響するのは「所得割」で、前年の所得が高いほど負担額も大きくなります。なお「平等割」については、採用していない自治体もあるため、実際の保険料の内訳を確認したい場合は、納入通知書や各自治体のホームページで確認しておくことがおすすめです。
出費を減らすための方法
退職後の保険選びでは「どの制度に加入するか」で保険料に大きな差が出ることがあります。ここでは、保険料をできるだけおさえるために知っておきたいポイントを具体的にご紹介します。
加入前に保険料を必ず比較する
国民健康保険は期限なく継続して加入できるため「とりあえず国民健康保険に切り替えればいい」と安易に判断してしまいがちです。また、任意継続健康保険は退職後20日以内に手続きが必要なため、焦って申請してしまう方も少なくありません。
ですが、まずは慌てずに、両方の保険料をしっかり比較してみることが大切です。収入や家族構成などの条件によっては、どちらか一方が大きく保険料をおさえられる可能性もあります。
扶養家族が多い場合は任意継続健康保険がおすすめ
国民健康保険では、家族全員がそれぞれ個別に保険に加入する必要があるため、世帯全体の保険料が高くなりやすい傾向があります。一方、任意継続健康保険であれば、扶養家族をまとめて加入させることができるため、その分保険料をおさえられる可能性があります。
定年後は国民健康保険だけが選択肢ではない
退職後の健康保険といえば国民健康保険を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、それだけが選択肢ではありません。任意継続健康保険や、条件を満たせば家族の扶養に入ることも可能です。制度ごとの違いや保険料をしっかり比較することで、家計への負担を軽くできる可能性があります。焦らず自分に合った制度を選びましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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