入院費が手術代込みで「100万円」に…退院後に「高額療養費」を申請したら、どれだけ戻る?

配信日: 2025.05.14

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入院費が手術代込みで「100万円」に…退院後に「高額療養費」を申請したら、どれだけ戻る?
かかった医療費が高額になった場合、自己負担限度額を超えた部分が後から払い戻される高額療養費制度。“いざ”というときにとても心強い制度ですが、実際にどのくらいの医療費をカバーすることができるのでしょうか。
 
今回は、高額療養費を申請した際の負担額について説明するとともに、高額療養費制度が適用されないケースや、検討が続く負担上限額の引き上げについても解説します。
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退院後に申請する場合の負担額

高額療養費制度を退院後に申請する場合、医療機関窓口で医療費の自己負担分を一旦支払い、後日払い戻しを受けます。なお、事前に「限度額適用認定証」を申請しておけば、自己負担限度額まで窓口での支払いをおさえることができます。後日の申請でも事前申請でも、最終的な自己負担額は同額です。
 
例えば、70歳未満・所得区分「標準報酬月額28万~50万円」で入院費が「100万円」の場合、実質的な負担額はおよそ9万円となるでしょう。
 
ただし「払い戻し」は、医療機関の審査を経て、診療月から3ヶ月以上かかる点に注意してください。
 

退院後に高額療養費の支給を申請する方法

高額療養費制度の申請方法は各保険組合によって異なるため、社会保険や国民健康保険の保険証に記載されている保険者に確認しましょう。
 
例えば国民健康保険の場合、申請先は市区町村で、領収書・保険証・振込口座が分かるものなどが必要です。特に領収書は紛失しやすいため、確実に保管しておきましょう。
 
なお「保険適用外の医療費」「1ヶ月の医療費が負担上限額以下」「70歳未満で負担額が合算しても月2万1000円未満」の場合などは、高額療養費制度が適用されません。
 

現在の70歳未満の負担上限額

厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」に記載されている70歳未満の負担上限額と多数回該当の負担額は、表1の通りです。
 
表1

世帯年収 負担上限額(70歳未満) 多数回該当の負担上限額
住民税非課税 3万5400円 2万4600円
約156万~370万円 5万7600円 4万4400円
約370万~770万円 8万100円+(医療費-26万7000円)×1パーセント
約770万~1160万円 16万7400円+(医療費-55万8000円)×1パーセント 9万3000円
約1160万円~ 25万2600円+(医療費-84万2000円)×1パーセント 14万100円

厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」を基に筆者作成
 
なお「多数回該当」とは、高額療養費制度を年3回以上利用する人の負担を軽減する仕組みで、4回目から上限額が下がります。
 

今後引き上げが検討される負担上限額

現在、国は能力に応じて全世代が支え合う社会保障を構築する仕組みとして、所得に応じた負担上限額の引き上げを検討しています。
 
引き上げは3段階に分かれており、厚生労働省保険局の「高額療養費制度の見直しについて」によれば、第1段階となる70歳未満の1ヶ月あたりの負担額の上限引き上げは、表2の通りです。
 
表2

世帯年収 引き上げ後の負担上限額 現在の負担上限額との差額
住民税非課税 3万6300円 900円
~約370万円 6万600円 3000円
約370万~770万円 8万8200円+(医療費-29万4000円)×1パーセント 約8100円
約770万~1160万円 18万8400円+(医療費-62万8000円)×1パーセント 約2万1000円
約1160万円~ 29万400円+(医療費-96万8000円)×1パーセント 約3万7800円

厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」を基に筆者作成
 
表2より、世帯年収によって現在の負担上限額よりも約900円~3万7800円増えることが分かります。
 
なお、第2・第3段階では、住民税非課税世帯を除く各所得区分「~約370万円」「約370万~770万円」「約770万~1160万円」「約1160万円~」をそれぞれ3つに細分化した12区分で、さらなる引き上げが検討されています。
 

医療費が「100万円」の場合、「高額療養費制度」を申請すれば、負担額を約9万円におさえられる可能性がある

退院後に「高額療養費」を申請する場合は、負担割合に応じた金額を一旦医療機関へ支払い、該当する年収に応じて払い戻しを受けられます。最終的な負担額は、事前に申請した場合と同額です。
 
ただし、払い戻しには3ヶ月以上かかるため、緊急時のためのお金を確保しておくことも大切です。
 
今後検討される、所得を13区分(住民税非課税世帯含む)に細分化した負担上限額引き上げについては、最新情報を確認し、自分が該当する年収区分と負担上限額を把握しましょう。
 

出典

厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ
厚生労働省保険局 高額療養費制度の見直しについて
厚生労働省保険局 医療保険制度改革について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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