父が亡くなり、生前贈与で兄が「100万円」多く財産を引き継いでいたことが発覚!妹の私も同じように請求できないの?
配信日: 2025.06.09

この記事では、生前贈与が特別受益と見なされるケースとそうではないケースについてシミュレーションします。

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子どもたちの相続分は均等である
遺言書がない場合、子どもたちに遺産(相続財産)は均等に分割されます。
例えば、母がすでに亡くなっており、父親の財産を子ども3人で相続する場合、法定相続分では遺産は3等分されるのが原則です。
したがって、兄(息子)だけが生前贈与として100万円多く財産を受け取っていた場合、相続の段階で妹(娘)は自分の相続分を多く請求できる可能性があります。
ただ、すべてのケースで相続分が増えるわけではありません。ここでは、「生前贈与の額だけ相続分を調整して請求できるケース」とそうではないケースについて解説します。
生前贈与が特別受益にあたるケース
親族から生前贈与として受け取った財産は、「特別受益」と見なされる場合があります。生前贈与が「遺産の前渡し」と考えられる場合、特別受益に該当するかもしれません。
特別受益がある場合、それぞれの相続分は次のように算出されます。
1. 相続財産に特別受益を上乗せする
2. 特別受益込みの相続財産を法定相続人で均等分割する
3. 特別受益を受け取った相続人の相続分から特別受益分を差し引く
以下のケースでシミュレーションしてみましょう。
・被相続人:父
・相続財産:1000万円
・相続人:長男(兄)、長女(妹)
1. 相続財産に特別受益を上乗せする
1000万円+100万円=1100万円
2. 特別受益込みの相続財産を法定相続人で均等分割する
1100万円÷2=550万円
3. 特別受益を受け取った相続人の相続分から特別受益分を差し引く
550万円-100万円=450万円
【最終的な相続分】
兄=450万円、妹=550万円
このように、兄の分の特別受益分を差し引くことで、妹の相続分が50万円増えました。
兄は生前贈与として100万円を受け取っているため、兄と妹は父親から平等に財産を引き継いだことになります。
遺言書を作成していると、相続分を均等に分割できないケースがある
被相続人が遺言書によって相続割合を指定している場合、その内容は法定相続分(法律で決められた相続割合)よりも優先されます。
例えば、遺言書において「兄に渡した100万円は生前贈与であり遺産ではない」と記していた場合、先に受け取っていた100万円は特別受益とは見なされません。
したがって、1000万円の遺産を単純に兄と妹で均等分割します。この場合、兄と妹の相続財産はともに500万円です。ただ、兄は生前贈与分の100万円を受け取っているため、その分だけ妹よりも多く財産を引き継いだことになります。
特別受益の判断基準は、「生前贈与の目的」です。特別受益の判定はケースバイケースの部分が大きいため、あらかじめ専門家に相談しておくことをおすすめします。
いざ相続となったときに思わぬトラブルが起きないよう、生前に意思を確認しておきましょう。
遺言書があっても遺留分が認められるケースもある
相続では「法定相続人」と「遺留分」が定められています。法定相続人は、「自動的に相続の権利が発生する相続人の範囲」です。法定相続人には以下のように相続順位が定められています。
1.子ども・孫
2.親・祖父母(直系尊属)
3.兄弟姉妹(甥・姪含む)
なお、配偶者がいる場合、無条件で法定相続人となります。同じ順位の相続人の間では、相続財産は人数で均等分割することが原則です。
遺留分は法定相続人(兄弟姉妹以外)に認められた「最低限受け取れる相続割合(相続財産全体に対して)」で、「総体的遺留分」と「個別的遺留分」に分けられます。
総体的遺留分のパターンは以下の通りです。
相続人が直系尊属(親など)のみ=3分の1
それ以外(子どもや配偶者など)=2分の1
例えば、父親の遺産を妻と子ども(一人)で相続する場合、個別的遺留分は以下のように算出されます。
1.遺産の2分の1(総体的遺留分)が妻と子どもに割り当てられる
2.妻と子どもそれぞれの法定相続分を総体的遺留分に掛け合わせる
【個別的遺留分】
妻:2分の1×2分の1=4分の1
子ども:2分の1×2分の1=4分の1
遺言書に記された相続分が遺留分よりも少ない場合、「遺留分侵害額請求権」を行使することで、遺留分相当の財産を受け取ることが可能です。
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特別受益にあたる生前贈与は相続時に相殺できる
特別受益と見なされる生前贈与は原則、相続分から差し引くことで公平性が保たれます。冒頭のケースでは、生前贈与が「遺産の前渡し」であることを証明できれば兄が受け取っていた100万円は相続財産から差し引かれ、その分だけ妹の相続分が増える計算になります。
相続では遺言書が重要です。原則として、遺留分以外は遺言書に記された相続内容が優先されます。
仮に、遺言書において「兄への100万円は遺産の一部ではない」などと記されていた場合、先に受け取っていた分は相続財産から差し引かれないケースも少なくありません。いざというときに相続トラブルが発生しないよう、被相続人の生前の意思を確認しておきましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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