97歳の祖父が「危篤」に! 口座凍結前に預金「2000万円」を引き出しておきたいけど、家族でも勝手に引き出すと“犯罪”になりますか? 相続トラブルを避けるためのポイントもあわせて解説
配信日: 2025.05.28

本記事では、高齢の祖父が亡くなる前に、口座凍結を心配して祖父名義の預金を引き出そうとしているケースを取り上げます。はたして問題はないのでしょうか。

2級FP技能士
口座凍結って何?
口座凍結とは、その名の通り口座が凍結されて預金取引ができなくなることをいいます。「預金取引ができない」というのは、預金の引き出しができないだけでなく、振り込みや自動引き落としなど、口座を利用したすべての取引ができなくなる点に注意しましょう。
口座凍結が行われる理由は、口座名義人の預金を守るためです。死亡して持ち主がいなくなった口座の預金は、家族など本人の通帳やキャッシュカードが扱える人であれば引き出せてしまうからです。
なお、口座凍結は口座名義人が死亡したら即時で行われるわけではありません。銀行が死亡を知った時点で行われるので、通常は親族が銀行に死亡の連絡をした時点がほとんどです。つまり口座凍結を恐れて、死亡直前に焦って預金を動かす必要はないわけですね。
相続トラブルに要注意
祖父の死に関連して必要になる費用のために、祖父が生存しているうちに口座からお金を引き出しておく行為については、祖父が納得して同意しているのであれば問題ありません(勝手に行うと犯罪です)。
ただ、祖父の財産は死後、相続財産となり、相続人で分け合うものである点に注意しておく必要があります。
「祖父の相続財産=相続人(全員)の財産」なので、いざ遺産分割協議が始まったときに、他の相続人が、死亡直前に多額のお金が引き出されていることを知ったら何を思うでしょうか。「葬儀代だな」と納得してくれればよいですが、「相続開始前に誰かが着服した」と疑う人もいるかもしれません。相続トラブルに発展する可能性があります。
祖父の死亡前に預金を引き出す場合には、相続人全員に説明して納得を得ておくと安心です。用途が葬儀費用であれば、引き出した金額に対していくら使ったと説明がつくように、葬儀の請求書などを保管しておきましょう。
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口座凍結中でも引き出せる
口座凍結中であっても、一定額までであれば死亡した人の口座から預金を引き出せる「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」があります。家庭裁判所の仮処分が不要で、銀行手続きのみで引き出す場合には、次のいずれかのうち金額の低いほうが限度額となります(相続人が単独で払い戻しができる金額)。
・相続開始時の預金額×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続分
・150万円
例えば、相続開始時の預金額が2000万円で、払い出しを行おうとしている相続人の法定相続分が1/4の場合、「2000万円×1/3×1/4=約166万円」ですので、上限額の150万円まで引き出すことができます。
まとめ
死期が近い祖父の預金を生存中に引き出す場合には、死後の相続トラブルを防止するため、祖父の相続人全員の了解を得てから行うようにしましょう。相続人がわからない、連絡がつかないなど了解を得ることが難しい場合には、口座凍結中でも預金を引き出せる「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」の利用を検討しましょう。
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士