祖母の相続「8000万円」終了後、タンスから「200万円」が出てきた! パーッと“家族旅行”に使いたいけど、これくらいなら問題になりませんよね? 勝手に使うリスクも解説
配信日: 2025.05.25 更新日: 2025.05.26

本記事では、亡くなった祖母のタンスから出てきた200万円を、孫である発見者の家族旅行に使おうとしているケースを取り上げます。遺産が8000万円もあったようなので、「200万円くらい問題にならないよね」と考えているようですが、少なからず問題はありそうですね。解説します。

2級FP技能士
相続税の修正申告が必要
遺産が8000万円あったということなので、相続人の人数によっては相続税が発生しているでしょう。相続税発生の有無は、原則として遺産が基礎控除額を超えているか否かで判断します。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
基礎控除額が8000万円を超えるためには、相続人が9人必要となります。祖母の夫とその子ども8人の合計9人といったところでしょうか。しかし、子どもが8人ということは非常に珍しいケースなので、相続税申告は行った可能性が高いでしょう。
となると、相続申告後に出てきた200万円は、申告から漏れているため修正申告が必要になり、200万円に対する相続税を追加で納めなければなりません。
200万円を勝手に使うのは窃盗
8000万円の遺産は相続人で分割し、相続税申告を行ったでしょう。あとから出てきた200万円についても、当然に相続人で話し合って分割する必要があります。200万円は見つけた人のものではなく、分割するまで相続人全員の共有財産なのです。
よって、見つけた人が勝手に家族旅行に使いこんでしまった場合には、横領罪や窃盗罪が成立する可能性があるので注意が必要です。
刑法では、「配偶者」「直系血族」「同居の親族」間での窃盗や横領に対しては刑が免除されるので、孫の場合は罪に問われませんが、相続人の配偶者などはこれらに該当しないので刑事告訴が可能です。
例えば、本記事のケースで200万円を見つけて使い込んだのが、祖母の子どもの配偶者であれば、ほかの子どもから刑事告訴される可能性があるということです。
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相続トラブルの発端になる
勝手な使い込みは窃盗罪になる可能性を解説しました。しかし、なにより気にしなければならないのは、相続トラブルによる家族の不仲なのではないでしょうか。
せっかく相続人たちが8000万円の遺産を円滑に分割できたにもかかわらず、ここで200万円を安易に使ってしまい、何らかの形でほかの相続人にバレたとします。一瞬で信頼は崩れ、ほかにも何か横領したのではないかと疑いを持たれるのではないでしょうか。
タンスに入っていた200万円を発端にして、家族の相続トラブルが発生してしまっては、8000万円もの財産を残してくれた祖母が何を思うかを考えましょう。
200万円を見つけたら取るべき行動
200万円を発見したら、触らずに一緒に住んでいる家族にも見せましょう。そして、いったんタンスを閉めましょう。その後は親(相続人)に対応を任せます。
相続人全員に連絡をし、集まった相続人で改めて200万円の確認をします。その後、時間のあるときなどに分割金額の話し合い、相続税の修正申告を行う流れになるでしょう
本記事のように、孫が200万円を発見した場合には十分な注意が必要です。相続の経過を知らなければ、やはりそこは人間なので「棚からぼたもち」の感覚が強くなり、勢いで着服してしまおうとする気持ちになることがあるかもしれません。
ただ、自身が200万円を家族旅行に使うことで、親とおじ・おばたちの相続トラブルが発生するかもしれない点を理解し、踏みとどまりましょう。
まとめ
発見したタンス預金を、相続人の承諾もなく家族旅行に使ってしまっては、相続トラブルが懸念されます。200万円は早い者勝ちではなく、あくまでも相続人全員の財産である点を念頭に置きましょう。発見したら、絶対に手を付けず、すぐに相続人へ伝えてください。
出典
国税庁 No.4152 相続税の計算
e-Gov法令検索 刑法
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士