扶養内で働く妻に「正社員雇用」の打診が! 妻は「損だから…」と嫌がっていますが、年収「103万→300万円」になるのにナゼ? 手取りも含めた“デメリット”とは
配信日: 2025.05.29

本記事では、正社員になることの打診を受けた妻が、その悩みを夫と共有できていないケースを取り上げます。一般的に正社員になることで年収は上がりますが、一方で正社員になることで生じる問題点を考えてみましょう。

2級FP技能士
正社員になれば手取り収入が約130万円増
今回のケースの妻は現在年収103万円、正社員になると年収300万円になるということで、それぞれの手取り額を計算してみましょう。
まず、年収103万円には住民税が1万円程度かかるのみなので、手取り額は102万円です。
次に年収300万円です。正社員なので、所得税と住民税以外に社会保険料もかかります。月収25万円(年収300万円÷12ヶ月)として計算します。
【社会保険料】
健康保険料:1万4950円(介護保険第2号被保険者に該当する場合)
厚生年金保険料:2万3790円
合計:3万8740円
【源泉所得税】
5200円
【住民税】
(300万円-給与所得控除98万円-基礎控除43万円)×10%=15万9000円
(15万9000円+均等割5000円)÷12ヶ月=約1万3600円
【手取り収入】
(25万円-3万8740円-5200円-約1万3600円)×12ヶ月=約230万円
正社員になると社会保険料や税金を年間約70万円負担することになりますが、それでも手取り額は年収103万円のときからは、約130万円増える計算になりました。今の倍以上の収入が得られますね。夫がこの部分しか見ていないのであれば、妻が正社員になるのを嫌がることを不思議に思うのもうなずけます。
正社員になると労働時間が増える
現在年収103万円の扶養内で働いているということは、労働時間も正社員より短いでしょう。仮に月給8万円で時給1000円とすると、労働時間は80時間です。正社員が160時間(1日8時間、20日勤務)と仮定すると、約半分の労働時間です。
では、正社員の労働時間に比べると余っているとも言える「1日4時間」で、妻は何をしているのでしょうか。扶養内で働いている人だと、家庭内の家事、育児、介護に費やしていることが多いのではないでしょうか。それらに対する夫の協力具合によっては、「1日4時間では全く足りない! 」という人も多いかもしれませんね。
正社員になると責任が増える
一概に言えることではありませんが、多くの場合、パートで働く人よりも正社員で働くほうが責任の重い仕事を任されるでしょう。そうなると、突発的に起こる子どもや親の看病などで休みを取りにくくなるかもしれません。パートより正社員のほうが働く時間が固定される場合が多いので、働き方の自由度が下がる可能性があります。
まとめ
年収103万円のパートから年収300万円の正社員になれば、社会保険料や税金を考慮しても、家庭の収入は約130万円増えるでしょう。月10万円以上の収入アップは大きな潤いになるはずです。
しかし、現在妻が働く時間をセーブしていることで受けている恩恵にも目を向けなければなりません。働く時間を倍増させるのであれば、その分、夫が家事、育児、介護などを負担する必要があるでしょう。その見込みが付かないとの判断から、妻は正社員になることを「損」だと表現しているのかもしれません。
出典
東京都主税局 個人住民税
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
国税庁 給与所得の源泉徴収税額表(令和7年分)
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士