株式の上場を目指すには、具体的にどのような条件を満たす必要があるの? 「プライム・スタンダード・グロース」それぞれの上場基準を解説
配信日: 2025.03.08

各市場の詳細な上場基準について、流動性基準から財務基準まで、実務的な観点から解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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上場市場の基本的な違いと特徴
プライム市場は、グローバルな投資基準に適合する投資対象として、多くの機関投資家の期待に応えることが求められます。高い時価総額と流動性に加え、コーポレートガバナンス・コードのすべての原則を適用しなければなりません。
スタンダード市場は、公開市場として必要な基本的な機能を提供します。一般投資家による売買が円滑に行える程度の流動性があり、上場企業として必要な利益水準と財務基盤を備えている必要があります。
グロース市場は、高い成長可能性を重視する市場です。現時点での収益基準は設けていませんが、合理的な事業計画と成長戦略の開示が重要視され、主幹事証券会社による成長可能性に関する見解も求められます。
市場別の具体的な上場基準の詳細
表1は、3つの市場それぞれに関する、上場時に必要な具体的な基準です。重要な数値基準や維持すべき要件について、市場ごとの特徴を踏まえながら詳細を解説します。
表1
基準項目 | プライム市場 | スタンダード市場 | グロース市場 |
---|---|---|---|
純資産額 | 50億円以上 | 正の値 | 規定なし |
収益基準 | 2年で25億円以上 | 1年で1億円以上 | 規定なし |
時価総額要件 | 250億円以上 | なし | なし |
流通株式時価総額 | 100億円以上 | 10億円以上 | 5億円以上 |
株主数 | 800人以上 | 400人以上 | 150人以上 |
流通株式比率 | 35%以上 | 25%以上 | 25%以上 |
売買代金 | 日平均0.2億円以上 | 月平均10単位以上 | 月平均10単位以上 |
出典:東京証券取引所「新市場区分の上場基準」より筆者作成
各市場の特徴的な要件
プライム市場では、上記の数値基準に加えて、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが重視されます。また、投資家との建設的な対話を継続的に行わなければなりません。
スタンダード市場は、一般的な上場企業として必要な基本的な要件を中心に構成されています。プライム市場ほどの厳格さはありませんが、安定した経営基盤を示す必要があります。
グロース市場の特徴は、財務基準よりも成長性を重視している点です。数値基準は比較的緩やかですが、以下の要件が重要視されます。
・事業計画の合理性
・高い成長可能性の証明
・事業計画と進捗状況の継続的な開示
以上の通り、各市場はそれぞれの特性に応じた独自の要件を設けています。上場基準のハードルが最も高いのはプライム市場で、次にスタンダード市場、グロース市場の順です。
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上場維持基準と継続的な企業価値向上
上場後も各市場の維持基準を満たし続ける必要があります。特に重要な点は表2の通りです。
表2:各市場の主要な維持基準比較
市場区分 | 時価総額関連 | ガバナンス関連 | その他の要件 |
---|---|---|---|
プライム市場 | 流通株式時価総額 100億円以上の維持 |
コーポレートガバナンス・コードの完全適用 | 投資家との継続的な対話 |
スタンダード市場 | 流通株式時価総額 10億円以上の維持 |
基本的なガバナンス水準の維持 | 月平均売買高10単位以上の維持 |
グロース市場 | 上場後10年経過時点で 時価総額40億円以上 |
成長戦略の進捗状況の継続的な開示 | 事業計画の達成状況の報告 |
出典:東京証券取引所「新市場区分の上場基準」より筆者作成
最適な市場選択の重要性
上場を目指す企業は、自社の現状分析と将来の成長戦略を踏まえて、最適な市場を選択することが重要です。プライム市場は国際的な投資基準に適合する高い要件を設定しているため、最も上場のハードルが高いです。
スタンダード市場は安定した経営基盤を重視し、グロース市場は将来の成長可能性に焦点を当てているなど、各市場によって上場基準に特徴があります。
また、上場後も継続的な基準の遵守と企業価値の向上が求められます。市場選択は、単なる上場時の基準達成だけでなく、その後の持続的な成長戦略も考慮に入れて判断する必要があります。
出典
東京証券取引所「新市場区分の上場基準」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー